個人事業主の方が建設業許可を申請する際、確定申告書の「給与」欄に記載があることは実はめちゃくちゃ多いです。
もちろん、実際にどこかに勤めていて貰っている場合もあれば、「そういう取り決め」で給与として貰っているような形にしている…様なこともあり、実際には様々な理由があります。
しかしながら、この確定申告書の給与欄の記載。建設業許可を取得する際の審査においては「経営業務の管理責任者(経管)」としての常勤性や経験を疑われる大きなポイントになります。
一言で言うとめちゃくちゃ不利に働きます。
結論から申し上げますと、「給与の性質」と「実態」によりますが、原則としては経営経験が非常に厳しく審査され、そのままでは許可が下りないリスクが高いです。
以下に、なぜ給与欄の記載が問題になるのか、許可取得の可否を分けるポイント、および対処法について、実務的な観点から詳しく解説します。
1. なぜ「給与」欄の記載が問題になるのか
建設業許可を取得するためには、経営の責任者である「経営業務の管理責任者(以下、経管)」が主たる営業所に常勤していることが絶対条件です。
個人事業主本人が経管になる場合、その事業に専念していることが求められます。
確定申告書の第一表にある「給与」欄に金額が記載されているということは、「事業以外にどこかから給与(アルバイト代や他社の役員報酬など)を受け取っている」ことを意味します。仮に実際はそうでなかったとしても、行政機関側は以下のように見なします。
- 「他の会社で働いているのではないか?」
- 「他所で働いているなら、建設業の経営に専念(常勤)できていないのではないか?」
建設業許可は「適正な経営」を担保するための制度であるため、副業的な立ち位置での申請は原則として認められません。
2. 給与の「内容」による判断の違い
給与欄に記載があっても、その中身によっては認められるケースと、即座に却下(または取り下げ指導)されるケースに分かれます。
① 許可取得が困難なケース(他社での勤務)
- 他社でフルタイムの正社員として働いている: 物理的に常勤性が認められないため、許可取得は不可能です。
- 他社の社会保険に加入している: 給与額に関わらず、他社が主たる勤務先とみなされるため、ほぼ不可能です。
- 夜間や休日以外のアルバイト: 建設業の営業時間中に他所で働いている場合、常勤性が否定されます。
② 認められる可能性があるケース
- 前職の給与が含まれている場合: 申告対象年の途中で独立したため、前半期の給与が記載されているケース。これは退職証明書などで「現在は辞めている」ことを証明できれば問題ありません。
- 非常勤役員報酬: 他社の役員を兼務していても、それが「非常勤」であり、週に数時間程度の従事であれば、申告書上の金額が少額(例:年間数十万円程度)なら認められることがあります。※絶対ではありません。
- 還付金などの会計処理ミス: まれに事業所得を誤って給与欄に記載してしまっているケース。この場合は税務署で「修正申告(更正の請求)」を行い、正しい申告書を提出し直す必要があります。
3. 「経管」としての経験期間への影響
給与欄の記載は、現在の常勤性だけでなく、過去の経営経験(原則5年以上)の証明にも影響を与えます。
建設業許可の申請では、過去5年分(またはそれ以上)の確定申告書の控えを提出します。
その全ての年で給与欄に高額な記載がある場合、「この5年間、本当に建設業をメインで経営していたのか?」と疑われます。
例えば、「生活費を稼ぐために他社で週3日アルバイトをしながら、残りの日で建設業を営んでいた」という実態だった場合、その期間を「経営経験」としてカウントしてくれない可能性が非常に高いです。
4. 注意点:自治体ごとのローカルルール
建設業許可の審査基準は、国土交通省の建設業法や施行規則に基づきつつも、各都道府県によって運用の仕方が異なります。
「給与が1円でもあるだけで追加説明を求める県」もあれば、「年間100万円以下なら不問とする県」もあります。地域的なローカルルールによって申請が可能かどうかの可否が判断される点となります。
申請前には、必ず管轄の土木事務所や建設業課の窓口、または建設業に特化した行政書士に事前に相談を行い、自身の確定申告書の状況で通る見込みがあるかを確認してください。
5.まとめ
個人事業主の確定申告書に給与記載がある場合、「現在はその給与が発生する仕事をしていない」ことあるいは「その仕事が極めて付随的で、建設業の経営に一切支障がない」ことを客観的な資料で証明できれば、建設業許可の取得は可能性はあります。
しかし、現在進行形で他社の社会保険に入っていたり、フルタイムに近い給与を得ていたりする場合は、経営経験の証明は極めて困難となるパターンは非常に多いです。経営経験が認められないと建設業の許可を取得することができません。
まずは、その給与が「いつ」「どこで」「どのような性質で」発生したものかを整理することから始めてください。
また、特に理由もなく事業所得を給与などで受け取る(処理している)と建設業の許可の取得の際に大きな足かせとなることが多いため、可能であればきちんとした申告を行っておくことが重要です。
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