いきなりですが、まず結論から申し上げますと赤字決算であっても、建設業許可を取得することは可能です。
建設業許可の要件において、赤字であること自体がただちに欠格事由(不許可の理由)になるわけではありません。
しかし、許可要件の一つである「財産的基礎(または金銭的信用)」の審査において、赤字の度合いや貸借対照表の状態(自己資本の額など)が大きく影響します。
本記事では、赤字決算でも許可が取れる理由、クリアすべき財産的基礎の基準、注意すべき「債務超過」との違い、そして万が一基準を満たさない場合の具体的なリカバリー策について、実務的な視点から詳細に解説します。
1. なぜ赤字決算でも建設業許可が取得できるのか?
結論から言うと、建設業法が求めているのは「現在の利益(黒字か赤字か)」ではなく、「工事を途中で投げ出さずに最後までやり遂げられる最低限の資金力や信用があるか」だからです。
建設業許可(一般建設業)の財産的基礎の審査では、主に「直近の決算期における財務状況」または「資金の調達能力」がチェックされます。
例えば、たまたま大型の設備投資をした、あるいは特定の案件で損失が出てその期だけ赤字(営業損失や当期純損失)になったとしても、これまでの貯え(内部留保)が十分にあり、会社全体の財政状態が健全であれば、許可は問題なく下ります。
2. 一般建設業許可で求められる「財産的基礎」の基準
知事許可や大臣許可を問わず、一般建設業許可を取得するためには、次のいずれかの基準を満たす必要があります。赤字決算であっても、以下のどれか一つを証明できれば要件をクリアできます。
① 自己資本の額が500万円以上あること
「自己資本」とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計額を指します。
直近の決算書において、純資産の合計が500万円以上残っていれば、その期がどれだけ大赤字であったとしても、この要件で許可を申請できます。
② 500万円以上の資金調達能力があること
直近の決算で赤字が続き、純資産が500万円を下回ってしまっている場合でも、まだチャンスはあります。取引銀行などから「500万円以上の融資が可能である」ことの証明、あるいは「500万円以上の預金残高がある」ことを証明できれば要件を満たせます。
- 残高証明書の発行:申請する名義の口座に500万円以上の残高があることを示す「預金残高証明書」を銀行で発行してもらいます。有効期限(多くの自治体で発行日から1ヶ月以内)があるため、申請の直前に取得する必要があります。
- 融資可能証明書の発行:銀行から500万円以上の融資枠があることの証明書を発行してもらいます。
③ 許可取得後、継続して5年間営業していること
これは「更新」の際に適用される基準です。すでに許可を持って5年間営業しており、今回が更新申請である場合は、財産要件を改めて厳しく問われないケースがほとんどです。
3. 最も注意すべき「債務超過」のリスク
赤字決算そのものは問題ありませんが、赤字が積み重なった結果、「債務超過(さいむちょうか)」に陥っている場合は注意が必要です。
- 赤字:一定期間(1年間など)の「支出が収入を上回った状態(損益計算書上の話)」。
- 債務超過:会社が抱える「負債の総額が、資産の総額を上回った状態(貸借対照表上の話)」。純資産の部が「マイナス」になります。
直近の決算が債務超過(純資産がマイナス)の場合、上記の「① 自己資本が500万円以上」のルートは自動的に使えなくなります。
この場合、許可を取得するためには必ず「② 500万円以上の預金残高証明書」を提出しなければなりません。
もし「債務超過であり、かつ口座に500万円以上のキャッシュもない」という状態であれば、一般建設業許可の取得は不可能となります。なんとかしてかき集めてください。
4. 特定建設業許可の場合は基準が極めて厳しい
ここまでは「一般建設業許可」を前提として話をしてきましたが、元請として大きな金額の下請契約を発注する「特定建設業許可」を目指す場合は赤字や債務超過に対して非常に厳しい制限がかかります。
特定建設業では、下請保護の観点から「一過性の残高証明書」での救済措置がなく、直近の決算書(財務諸表)そのものが以下の4つの基準をすべて同時に満たしていなければなりません。
- 欠損比率が20%以下であること
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上あること
- 自己資本の額が4,000万円以上あること
特定建設業の場合、赤字が原因で「欠損比率が20%を超えた」り、「自己資本が4,000万円を割り込んだ」りした時点で、その期の決算書では絶対に許可が取得できなくなります。
次の決算で黒字化し、財務を改善するまで待つ必要があります。
まとめ
建設業許可は、赤字決算であっても「純資産が500万円以上ある」か「口座に500万円以上の残高がある」のどちらかを満たせば取得可能です。
自社の最新の決算書(貸借対照表)を開き、まずは「純資産の部の純資産合計」の金額を確認してください。そこが500万円以上であれば、赤字を心配する必要はありません。
もし500万円未満(またはマイナス)であれば、銀行口座に500万円を集める準備、あるいは増資などの手続きを進めていきましょう。
もちろん建設業許可には財産要件以外にもさまざまな要件があります。
「赤字決算だけど建設業許可が取れるかな?」といった疑問についてはいつでもお気軽にお問い合わせください。弊所は建設業許可の専門の事務所としてお電話やメールなどであれば無料で解答させて頂いております。

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